11月4日

宣言通り、8時半に目が覚める。信頼できる体内時計の持ち主こと、私。起きて支度をして、ファッジが主催する「純喫茶ファッジ」というイベントのインスタライブで会場に設置されているピアノを弾く人として呼んでいただいたので、渋谷パルコへ。渋谷付近、土曜日だったから朝から人が多かった。着いてすぐにサウンドチェックが始まってあっという間に本番。トークしている人の裏でピアノを弾くということだったので、雰囲気に合わせて即興で20分くらい弾いた。終わってから「せっかくだから歌って〜」と言ってもらったので2曲ほど演奏する。『いつか離れて暮らすあなたと』と『25時過ぎに君とみた海は』の2曲。25時〜は、バンドの時に作った曲で5年振りくらいに演奏したが、かなりしっかり覚えていたので自分自身にとても驚いた。ていうか、ほんとうは違う曲をやろうと思ったんだけど、なんか気づいたら歌っていた。数ヶ月前にカラオケで歌っていたのがよかったのかもしれない。

そのあとは今日誘ってくれた編集者の友人・Sさんがパルコ上を連れ回してくれたので夕方くらいまで、ビールを飲んだりタコスを食べたり靴下を買ったりしてイベントを楽しんだ。フォトスポットで写真を撮ってもらい、後になって見返したが、動揺して乙女みたいな表情の私が撮れていた。こういうときにファニーな顔を瞬時に作れるようになりたいとずっと前から思っているはずなのに。午後、昨日の結婚式のテーブルが一緒で仲良くなったafter six poolsideのフミキモくんが来てくれて、買い物したりコーヒーを飲んだりした。すごくかっこいい画集も見せてくれた。ベンチに座って休憩していたら、アン・ハサウェイのような人が真向かいに座っていて目を奪われた。その人もかっこよかった。

夕方過ぎに帰宅して、21時間には寝ていた。ここ5日間位、おそろしい程あっという間に過ぎていったが、これくらい愉快な感じならもっと爆速で時間が過ぎていってくれてもいいと思った。

11月3日

友人の結婚式と披露宴に参列した。バスの遅延で遅刻ギリギリになってしまい、慌ててタクシーに乗り換えて急いでいる旨を伝えたら「まさか、新郎ですか?」と運転手の方が言ってきてくれたので、和んだ。新郎だったらとんでもないよ。

どうにか滑り込み式から参加した。披露宴で、ファーストバイトのケーキの前でギター持ってAのコードを鳴らす新郎を私は初めて見た。また、二次会のビンゴではAmazonギフト券(二等相当?)をうっかり獲得してしまったので動揺した。ビンゴしたところで、とはもう言っていられなくなったなと思った。存在は知っていたがあまり話したことのない人とたくさん話したり、昔お世話になった制作会社の人と久しぶりに再会できたりしたのがおもしろかった。話しかけるタイミングを窺い過ぎて最初はずっと1人でいたことがなんというか今となっては笑えて仕方がない。はずかしい。さっさと勇気を出したほうがいい。

明日の午前中、渋谷パルコへ行く予定ができた。どうやら私は11時半頃からピアノを弾いたり歌ったりするらしい。なんの曲やろうか。あとそういえば、パルコでライブめいたことをするのは建物のリニューアル前に下川サブカルブス殺しという妙な名前のユニットで出演した以来だなと10年位前の出来事を不意に思い出したが、思い出さなかったほうがよかったかもしれないと思った。訳の分からない記憶すぎるし。とにかく早起きすることだけを目標にねむる。

11月2日

すいみんを断念して朝の7時前に起床。祖父邸2日目。朝食をすませて、すぐに今回の旅程のいちばんの目的であった祖父のiPhoneのセットアップ作業を行う。年配者向けのかんたんスマホからiPhoneへ移行する。心配そうに見守るiPad二台持ちの83歳。私は家の風呂場で水没させて以来、買い直してもいないというのに。データ移行して、祖父の顔面を借りまくってFace IDでロックを解除を試みながら必要なアプリをダウンロードした。SIMの交換が必要だったので店舗へ赴き、契約変更してもらう。午前中にすべてが終わったので、祖父馴染みの定食屋へ行く。子供の頃に見たことのある人がおじいさんになっていたので驚く。そこから東京に帰って美容院で髪を切って帰宅。つけてもらったことのないオイルが高級な豆乳のような香りだったので「良い豆腐に顔突っ込んだみたいな香りですね」って言ったんだけど誰からも賛同を得ることはできなかった。良い豆腐みたいだったのに。

11月1日

10月が終わったという事実を私はまだ受け止めきれていない。仕事を済ませて、当日配信のポッドキャストを録り(まちがえて一回消して二回録ったので何を話したかところどころ覚えてない)夕方頃、新幹線に乗って祖父の家にiPhoneの設定するために自宅を出る。新幹線のホームでアイスの自販機を探そうと思っていたが、駅に着いた頃にはもう忘れていた。祖父と合流して、ご飯を食べに行った店で特に応援していない日本シリーズを観たり、賑やかな隣席の方々からバウアー投手のユーチューブの話を聞いたりした。CADを使ってグローブの解説してる動画は私も観たことがある。おそるべしサイ・ヤング賞の人。

0時過ぎ、祖父邸のはなれで眠る。家屋が古いのと山が近いのもあって自宅の五倍は寒さを感じる。エアーベッドなるものが置いてあったので試しに寝転がってみる。空気が抜けている状態だったのか、おそろしく寝づらい。マヂカルラブリーの「吊り革」くらい体勢を崩しながらしばらく寝てみたのだがどうにもうまく寝付けなかったので数年ぶりに畳の上に布団を敷いて寝た。寒すぎてねこくらい縮みながら寝た。

とうぜん、朝まで眠れる訳もなく三時間程で目が醒める。さむすぎ。今冬はじめての暖房を入れる。起き上がって部屋の中を見渡す。壁にかかってる古い絵を見ていたら、自分が自由に振る舞うことで人から嫌われてしまうんじゃないかという不安を私はあまり感じることなく生きてきたのかもしれない、といった考えが突然頭をよぎる。それなりに身勝手な振る舞いをしてきたくせに、恐れることなく自分らしく振る舞う訓練を積んでこなかった自分自身に対して絶望しそうになる。制限された自分の姿がそこにあり続けることや自由な振る舞いによって自身が嫌われてしまうことよりも、誰かの自由を受け止められない自分が存在することのほうがなによりも恐ろしい気がするので、せめてこれからは自由に振る舞うことが自然にできるようにならなければとか、そんなことまで考えても結局眠ることはできなかったので諦めて本棚から分厚めの本を持ってきて読んだ。何冊か持ってきたうちの一冊は辞典だったが、それも読んだ。

朝の光で障子が透けていくさまを眺めながら手元では無意識にiPhoneのロックを解除していたので目をやると、見覚えのないアプリのアイコンが画面上に映り込んでいた。おや、なんか微エロのアプリゲームでもダウンロードしてしまっていたかな、と一応確認したらSHEINのアイコンだった。まぎらわしい。ブラックフライデーなのかよ。